溺れたいよね。
初谷むい




ひかりと海面はんしゃしあって揺れている

手縫いしたおへそのあながいたかった

てのゆびは五本 立入禁止措置

さかなへんの漢字をあたらしく作る

とおい縄 ほほえむだけが顔なわけ

おてがみにあああああああの消し忘れ

心臓はよくみずをすうさようなら






もっともっと世界を教えてほしかった。あたしはからっぽで海を見る、海を見てなにもおもわないなんて、からっぽに違いなかった。目を閉じてふれてもかたちがわかる、それにあたしの記憶がいろやかたちをつけて、なにもなかったように生活は続く。りんごの芯みたいにずっぽりとまんなかが貫かれて、あたしはもうおよぐしかないのかもしんないね。およいでったらあなたに会えますか。あたしの中身は、もう捨ててしまいましたか。もっともっと世界を教えてほしかった。きっとあたしはもう泳ぎも溺れもしないで、あたたかいふとんにくるまってねむる。いつかかならずみんなに会えなくなる。自動販売機を使って水を買う。そんなことが前もあった気がする。これは、誰の記憶なんだろう。触れて。遠くに行って。てをつないだことが、まいにち、すこしずつ、とおくなる。溺れたいよね。


川柳 溺れたいよね。 Copyright 初谷むい 2017-11-18 18:18:40
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