あの日
ヒヤシンス


 あの日、貴方が見せた笑顔は優しさそのものだった。
 あの日、貴方が零した涙は悲しみそのものだった。
 あの日、貴方が褒めた私は嘘そのものだった。
 あの日、貴方がくれた温もりに気付けなかった私。

 あの日は遠く陽炎のようで。
 あの日はまるで夢だったようで。
 あの日に起きたこと全部忘れられないようで。
 あの日ですべての時が止まったようで。

 悲しみの後で訪れた不思議な感覚。
 貴方という水辺で私という花は咲いていたのに。
 気が付くと、公園で一人で泣いていた。

 あの日がセピア色に染まってゆく。
 貴方を思い出にしたくない。
 公園に訪れたあの日の暮色が愛おしい。
 


自由詩 あの日 Copyright ヒヤシンス 2017-11-18 04:09:28
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