時間が散らかる
伊藤 大樹

あと何分で着くのか
うなじに尋ねる

水辺で死ぬ と
予告されたひと月前
の雲を抱えている
やさしい人たちが
みんな一斉に
難民になる島で
私は呑気に
ひたすら食器を洗った

こわれた砂時計から
時間が散らかる
何をしたらよいのか分からぬまま
目の前の汚れた食器を洗うことしかできない
絶望を杖がわりにして
かろうじて息をし安らいでいる
みじかい永遠

呼吸を測ったら
まばたきの練習をする
その気になれば
料理だってできる
こわれた砂時計は
もうごみ袋のなか

水晶体に
深海をとじこめて
回る泡を見つめる
あと何分で着くのか
分からぬまま
タクシーに連れられる


自由詩 時間が散らかる Copyright 伊藤 大樹 2017-11-16 17:45:27
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