あなたという光
AquArium

たまに全てが幻だったかのような
ふわりとした感覚に包まれる
部屋の隅に置いてある
明らかにひとつ趣味の違うクッションが
あなたという日々を確かなものにする

寝起きがすこぶる悪く
身支度に時間がかかり
髪型の仕上がりを気にしては
何度も鏡を見る
お気に入りのライダースを羽織り
生意気にサングラスをかけ
お決まりの革靴を履いて出る
ようやく動き出す正午すぎ

冬を呼ぶ風に吹かれていると
目が乾いて鼻が湿っぽくなる
残酷だけど鮮明な匂いだけが
そっと迎えにくるみたいで
あなたという記憶を棄てられない

好き嫌いが激しくひどい偏食家で
毎回緊張した食事の時間
手酌をさせると不機嫌になり
乾杯の前に呑もうとする仕草や
熱々のご飯は食べられない猫舌
好きなメニューは先に食べ
嫌いなものは最後まで残す
しばらくの間使えなかった食材たち

人の記憶は不確かなもので
都合の良いようにしか覚えられない
頭の中のどれくらい深い場所に
2人の景色が眠っているのだろう
あなたという世界を探している

自尊心を傷つけられることに敏感な
強いエゴイズムの持ち主が
誰かのために泣いたり謝ったり
性に合わないことをした
承認欲求のかたまりを
これでもかと見せつけてきては
手加減できない本音を晒してしまった
大人の対応は恋愛にも必要ね

もう忘れてしまうのかもしれない
そんな怖さがくるたびに
確かなものを思い出そうとする
ラブレターやアルバムの奥に生きる
あなたという愛そのものを










自由詩 あなたという光 Copyright AquArium 2017-11-15 22:59:50縦
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