'16 とある解夏
北井戸 あや子

聞いていたのは、どこか遠くで
伝わるだろうか、こんな遠くで
割いた 空気の内に
清らかな居場所があるという
だれも知れないそんな居場所が
帰らないのか、帰れないのか
解らないのは、当たり前だろ
夜のタイルを滑る明かりより弱く
嘔吐する弱い声
叫んでみても、どうやら迷子で
消え失せたくなる、日の真ん中で
君は知るだろ
君は見るだろ
手離してから、歩く先まで
行けるだろうか、近き遠くへ
通り雨に走った日
息切れて燐寸を擦りながら
ねえ、まるで淋しいレコードみたいだろ?
なんて吐いた
手を翳した少年の残香へ
遠く夏の気がふれる
ねえこんな晴れだと、ぼくは死んでるみたいだろ?


自由詩 '16 とある解夏 Copyright 北井戸 あや子 2017-11-07 00:19:02
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