無題 3編
北井戸 あや子

信号機の震音(signalとでも、云うか)三角、もしくはサイン
形、波(最後に聴力検査をしたのは、いつだったか)
しらしらした雨が遮断機に重なって、前は幻灯世界のよう(しかし排気ガスを吸い込む幻灯とは、これまた)
遮断機、だなんて、かなしい名前を与えられたもんだなぁと思う
ものがなしいメロディは、もう半ば内耳に溜まって
遮断機はとうに上がっていたのだと知る
(ピパポピした音色)(耳の悪さへ、少しぞっとした)
線路をカンカン叩くヒールについて歩くと
こんなに淋しく、錆びた鉄の香は雨に立った



燦々と酸性雨射って、散々
ぎらぎら、両足、群がった見物客
眼が渇いて、乾いて、変わったのさ
「双眼鏡を、呉れ」
異国の興ざめ、つんざいた
憐憫と乗る雑音
脆弱って、頷いた、うんざり
のたうつ喧騒へ吹っ掛けるおれの眩暈
喫い飽きたフィルタアちぎって
風と売る灰と燃す人生
嗤った奴から、死んでいくんだろ
乾々照りなら牢獄さ、嗚呼!
咽越しならとうに
嗄れちまいました



影を引き摺った
今日がまたサヨウナラ
手さえ振る暇もなく
傘ならもう、あの日に棄てました
蒼に痩せる暗がりなら星座に腰掛けて
あんたと話しましょう
長くとも直ぐに、拠る空は脆いのさ
喉笛、鳴らしてみた
下手くそな口笛ひずんだ
生真面目に空を穢した朝焼けに
また誰かは泣くのか?
それとも香る外れの雨が泣くのか?



自由詩 無題 3編 Copyright 北井戸 あや子 2017-11-07 00:15:27
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