山人

山間の、とある峠の一角に巨大な岩が奉られている
近くに湧き水が流れ、森の陰影のくぼみにそっと佇んでいる
神が宿るといわれてきた、大岩
峠道を歴史の人々が歩き、腰を下ろした
見つめた大岩に合掌し、旅の無事を祈ったのだろうか
まわりには数百年のブナが生え、岩を囲むようにしんとしている

多くの神が死に、その骸が粉になって
あらゆる物質にとりつくことを
人は神が宿ると揶揄した
それは人間が作り出した偶像ではなく
神の粒子が内包されている

神の膨大な死が
巨大な無機物の中に入り込み
そこに確かなエネルギーを内包している

日々を刻々と咀嚼し
行いの上を歩くとき
ふと、神は微笑むのだろうか


自由詩Copyright 山人 2017-11-03 21:01:37
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