唯一の親友
葉leaf

              ――B.j.へ

君には朝一杯のコーヒーが必要だった。悪意や復讐を溶かし込んだ生命の源泉としてのコーヒーが。コーヒーは強靭な孤独を湛え、君に生きる意志を与えてくれた。コーヒーを飲み干してカップを机に置く。すると君の頭脳には様々な医学的アイディアが浮かんでくる。君はそれを荒々しい筆跡でノートに書き留め、一息つく。

この世に正義は存在しない、そう語りながら、君は人命を救うという正義、義理人情という正義に忠実だった。繰り返される裏切りを華麗に切り抜けながら、それでも人を救うという信念を決して曲げなかった。貧しい人、弱い人へ限りない愛情を注ぎ、卑怯な人、傲慢な人には厳しく制裁を下した。

君は人々から嫌悪され、悪評は渦巻いた。君はそれらに傷つきながら、もはや傷つくことに慣れてしまった。一方で、君を強く愛する少数の人たちがいた。君はその愛を上手に受け取ることができなかった。君は自分を愛されるに値しない人間だと思っていた。だからこそ限られた人から愛されるのだった。

私もまた君によく似ている。決してヒーローを気取っているわけではないが、その生きることの不器用さにおいて君に痛く共感する。私は私の孤独と悪意と自己否定を君と共有し、勝手な連帯を思い描く。君が現実に存在する人間だったら決して友人にはなれなかっただろう。君が虚構の存在だからこそ、私は君と親友になれる。共にヤクザのように生きよう。


自由詩 唯一の親友 Copyright 葉leaf 2017-10-28 04:27:24
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