秋の名残り
ヒヤシンス


 よく晴れた日、木の下に立って空を見上げる。
 くたびれた木の葉が太陽の光を受けてオレンジ色に透けていた。
 これほど美しい情景があろうか。
 溢れた感情がフレームに収まり切れずシャッターは切らなかった。

 透けた葉越しに太陽を覗くとそれは秋だった。
 こんな小さな出来事に晩秋の匂いを嗅いだ。
 もうすぐ冬がやってくる。
 葉っぱの奴はそれに気付いて精一杯の情感を私に与えた。
 
 悲しくはない、ただ少し寂しいだけ。
 今の私に、決してあきらめるなと語ってくれているような気がする。
 私の心は決してあきらめないと無言で答える。

 秋の締めくくりを、初めて私は見たいと思った。
 淡い風に吹かれて、一枚、また一枚と葉っぱは朽ち落ちてゆく。
 季節の情感をただその木の枝に残して。

 

 
 


自由詩 秋の名残り Copyright ヒヤシンス 2017-10-28 03:39:17
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