風のためいき
山人


初冬の初雪の舞う中
風が木立ちの間を勢いよくすり抜ける
山の頂きから頂きに掛けて 
送電線の唸る音が聞こえる
人造湖は波打っている
一瞬ふわっとしたかと思うと
空は洗われ 雑木林は明るく広がる
すでに枯れた黒花エンジュから
スズメが生まれるように飛び立つ
突然 風はふっとためいきを漏らす
雪はまだ降っては いる
けれど 風のためいきとともにあたりは静止し
一枚の暖かく 白と黒の明るい絵となる
ふんわりとしたやさしい空間が生まれる
まだ間に合うかもしれない
だって風がやみ 風の吐息が感じられたから
するとまた パラパラと霙交じりの雪が
普通の呼吸に戻った風に押されて吹き付けた

とてつもない遠い山から山へと
木々の間を縦横無尽に吹き付ける風
じっと風を見回している私がいる
木の葉のように飛ばされたりはしない
風はまた ためいきを吐いて
落ち着くはずだ


自由詩 風のためいき Copyright 山人 2017-10-23 21:29:25縦
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