風に吹かれて見る夢
坂本瞳子

風が吹く
強く
トタン屋根が揺れる
怯える
妄想が始まる
風にさらわれて
知らない土地へ
飛ばされる
初めて見る海は
広く
大きく
だのにひとっ飛び

また風が吹く
さらに上空へ
坂が続く異国の風景は
靴の形を成す入江を越えて
岸壁にそびえる城の
鐘塔の柱に寝そべる猫は
見覚えのある三色の毛を
つくろってもて遊び
牙を剥き出して鳴き声を上げる
そのか細い強靭さに
身震いを覚えて

またもや風は吹く
左へと右へと
ゆらりふらりと揺らされて
目眩を起こすこともなく
足が地面につくことのない
この上ない心地良さ
不安定な安心感
満杯になることのない心
青褪めていく心臓

探しているのは行き先
居場所など
どこにもないことは知っている


自由詩 風に吹かれて見る夢 Copyright 坂本瞳子 2017-10-22 23:54:36
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