夢のあと
梓ゆい

紙の上を動き回る鉛筆が面白くて
描いた絵が動いたら面白いのに。と
いつしか思うようになった。

クレヨンと鉛筆を握り続けた幼い手と
走り続けた先で見えたもの。

ここにいる証を残せるようになりたい。と
静かに口をついた一言は
願い事になった。

声にならない想いが
食いしばった口元から涙と共に流れ落ちる。
言葉に出せない願いが
疲れた身体を奮い立たせる。

それらはすべて溶け合いながら
疼く痛みを飛び越えて
怒りも辛いと思う気持ちさえも
白い紙よりまぶしい光が
一つも残さず浄化させていった。

別れを告げたあの日から
私の心を一つこの場所に残し
今日も誰かが走り続けている。



自由詩 夢のあと Copyright 梓ゆい 2017-10-19 01:56:40
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