屋根裏に置かれたままのぼんやりとした記憶
宮木理人

倒れた花瓶は音を立てずに
閉じた瞼の裏側に沈み
たくさんの小人たちが行列をつくって
どんどんどんどん階段をくだっていく夢を
みています

雁字搦めに絡まった
優しい文章の尻尾の端を
夜な夜なほどく作業をしていて

やっとの思いでほどけたそれらを
解放してあげようと
それぞれの方向に解き放ってみたものの
みんな意外と自由に走りださずに
そこらでじっとしています

あれ、と思ってみていると
みんな一斉にこちらのほうを、無表情で見つめだして…



(屋根裏部屋にて)
僕らは小さな窓から見える
向かいの道路に突っ立ったまま静止している
一人の老人を観察していた

彼女は窓に顔を近づけながら
なにかを話し、僕は光のなかに
揺れる埃を浴びている、彼女の横顔を見つめた

同じ感情を、全く違う言葉で言い表してみせたかと思えば
全く違う感情を同じ言葉で表したりしている

老人の観察に飽きた僕らは
今度は天井の木目を迷路した
彼女はゴールを見失わないように、油性のペンでマークした




自由詩 屋根裏に置かれたままのぼんやりとした記憶 Copyright 宮木理人 2017-10-16 02:00:34
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