黄色い階段
宮内緑


遠回りをした先の
二度と通ることもないような裏通りで
黄色い階段をみた
幾重にも黄色く重ね塗りされたような階段
色合いもさることながら
どこへ通じているのか、そもそもここを上る人がいるのか
侘しくもどこか懐かしい、黄色くまばゆい階段
なんのことはない、脇にはイチョウの古木
落ち葉の丹念に敷き詰められた階段

二度と来ることもなさそうだから
その階段を上ってみたり
スケッチがわりに写真を撮ったり
近くにあったいつでも珍客を待ちわびているような
古びた自販機で何か買ってあげたり
そうしようと思ったが、少しの間立ち止まったきり
浮かんだことをなにひとつ遂げずに立ち去った
家に着くと小さな後悔が残った

いつかあの裏通りのことも忘れるのだろう
滑りやすそうな階段も
型式の古い自販機も
その場所がどこであったのかさえも
そしてまた似たような路を通るならば
由来の知れない郷愁にいざなわれるのだろう


自由詩 黄色い階段 Copyright 宮内緑 2017-10-08 18:25:11
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