本とは
小川麻由美

静かな佇まいのその本を眺め
どうしたものかと悩む毎夜
恐る恐る手を伸ばし
紙の感触を確かめるかのように
つかみ私の近い所に引き寄せる

一連の動作を繰り返し続ける
まるで誰かに指示されてるような
義務感に追われているような
そんな感覚でもって手にする

その本の装丁に魅惑されつつも
心なしか嫉妬が含まれているようだ
果たして私は扉を開ける事が
できるのであろうかという困惑

本は自分を開いてもらうのを待つ
色んな手法でもって待っているのだ
私はその事を知っている
なのに石膏像のように静止する

静止した私 静止した本
平行線を引きながら
決して交わる事はないのか
実った本は収穫を待つ

待てる事は本の長所と言える
仲間と集まり粛々と待つ
精かんな姿に惚れ惚れする
本とは そういった姿をとる


自由詩 本とは Copyright 小川麻由美 2017-10-03 10:13:16
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