道沿いのコスモス
藤鈴呼


道沿いのコスモスが歌う
妖艶な触手を張り巡らせて
おいでおいでと手招いていく

こちらには 海と山と谷と渓谷がありまして---
ちょっと待ってくださいよ
谷と渓谷は どう違うんですかいのう

谷は谷折りの谷
良く使うでしょう?

あなたの腰のように ひん曲がってしまっては
性格形成も困難になるわあなんて言っちゃって
あははと笑う

そんなら渓谷は どうなんですかいのう
山の隙間に走る 川のことですわいのう

そんなら峡谷は どうなんですかいのう
谷の壁が連なる部分と言ったところですかいのう

するってぇと 素肌じゃあ いけませんもんのう
藪蚊が寄って来るんですよ
誘っても いないのにね
にゃあにゃあと絡み付く 猫のようですわ

ふわりふわりと流れる香りで
桜の木を連想する頃
ゆっくりと 霧が 晴れて行く

キリの無い 鉄砲水の隙間に
丸太を押しとどめて 橋を渡すみたいに
足は泥濘に 捉えられる寸前

サンダル履きでは キツイ階段
ふと香る彩りに揺られながら
硫黄色の 温泉を目指す

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自由詩 道沿いのコスモス Copyright 藤鈴呼 2017-09-16 19:18:50
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