青い本
やまうちあつし

ふたりが離れてゆくときは
理由はなにも言わなくていい

ただ一冊の青い本を
ふたりの間に置けばいい

ページをめくれば顔を出すだろう
散歩していた黒猫や
わずかな値段で売られたスズメ

二十年後の再会を祈念して
ワイングラスの夕焼けを飲み干そう

いつものように
玄関先でハグをして
いつものように
ベランダに手を振って

なにごともなかったように
ただのいきものに
もどる

ふたりが離れてゆくときは
理由はなにも言わなくていい

ただ一冊の青い本を
薔薇のとなりに置けばいい


自由詩 青い本 Copyright やまうちあつし 2017-09-02 10:45:10縦
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