瑠璃木
本田憲嵩

大時計の針の上で寝そべる
空の瑠璃色を映す
湖の波紋が 夜の膜のように拡がってゆく
その浅い水の褥のうえには
夏に日焼けした物憂げな表情が
よりいっそうに青く映り込んでいる
その細ながい胴体である茶褐色の幹も
さらに細ながい桃花心木(マホガニー)の棒のような四肢も
そしてそのやわらかな二つの乳房さえも
ぼくにはすべて押しなべて その球根形に象られた臀部から
まるでそこをひとつの起点として
生えそろっている 一本の樹木なのではないか
とさえ錯覚してしまう
それは夜空から吹く 冷ややかな風によって磨かれた
青い鏡面のつややかさを
そのままに湛えているかのように
ゆらゆらと黒い川のように流れる その髪の煌めきは
たなびく夜を背景とした
無数の星星である



自由詩 瑠璃木 Copyright 本田憲嵩 2017-08-21 01:01:19
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