癌。それから
小川麻由美

ある者が私に病という糧を渡して以来
無駄なものはないという方向に
気持ちが移行してきたのがわかる

温かい経験も冷たい経験も
私を形成する一部となる
言うまでもないが病は辛いもの

冷たい嵐は不条理を突き付けて来る
いったい私の非はどこにあるのだろう
自分が癌だと偽って何を得るというのだ!

私の内では炎が立ち上がり
待てば消えると信じたが叶わない
やり場のない炎に薪をくべる

孤独の極みに身を置いたあの夜
忘れもしない忘れることなどできない
ひしひしと迫る絶対なる孤独

私は這い上がってきた。


自由詩 癌。それから Copyright 小川麻由美 2017-08-08 01:57:39
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