藤鈴呼


河原に生れる ネコヤナギ
少し春の矛先を帯びた風に吹かれて
ふわふわ ふわふわ
綿毛をも 連想する 頃合い

昔は ザクザクと 赤い筋を作りながら通り過ぎた
背の高い 緑のカーテンも
登山靴のような 大きな足跡で 埋めてしまえば
まるで 何事も なかったかのように
灰色の ハードルとなる

乗り越えられるか
その必要など ないと
普遍性に 背を向けて 呟くかで
その後の人生は 随分と変わって行くけれども

どうだい? 春の心地は
これから 温かな季節が来ると知って
誰よりも 嬉しいかい?
誰にともなく呟けば
まあるくなった やわらかな矛先が
うぬ と 揺れる

大きくなった 瞳には
ねこやなぎよりも もっと ふわふわの存在や
とてつもなく 純白な気持ちも 知ってしまった

この世の全ては 年を重ねる毎に 広がって
この世の全ては 私の知る限りの全て、と言う感覚に
変換される

あの頃 楽しそうだった タンポポの花びら 一枚一枚にも
西洋タンポポなのか ガクがあるのか ガックリするのか
綿毛のままで 一生を終えるのか なんて風に
幾つもの 問題が 散乱して

かき集める内に 五線譜を 忘れてしまった
音符よりも 心地良い光に 包まれて
そう それはきっと オカリナのような 不思議な形

穴が 幾らかあって
穴が 幾らもあって
指では とおしか 塞げないのに

何て はしたない格好も 出来ないから
どうしても 大好きな和音に 辿りつけぬまま

道端の 犬の遠吠えを
聴くともなく 効いているように

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自由詩Copyright 藤鈴呼 2017-08-04 22:17:11
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