東大寺にて
服部 剛

参道を無数の鹿が
長閑のどかなリズムで、歩いている

野球帽の少年が
鹿せんべいを
口許にやっては、はしゃぐ

首からカメラをぶら下げた
アメリカ人のおじさん

橙色の法衣を身に纏う
インドの僧侶達

赤いペアのTシャツを着た
中国人の若いカップル

佇めば
かれらは
傍らを過ぎてゆく

――時よ、僕を何処かへ運んでくれないか

石畳の道の
あちらこちらに散らばる
鹿の糞を避けて歩むうちに
近づく
門の向こう側に

巨大な寺

柄杓ひしゃくの水で
手を清めてから
本堂に入る

日本一の大仏は
旅人を待っていた
薄目を開いて、手をあげて

 やあ  






自由詩 東大寺にて Copyright 服部 剛 2017-08-02 10:28:13
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