獲物の狩人
ヒヤシンス


 戦い方を知らない僕は狩人だ。
 森の奥に隠れてじっと獲物を待っている。
 獲物を見つけても何も出来ずただ見送るだけ。
 消えるのは簡単だけどそうはいかないんだ。

 人は僕を優しいと言うけれど、ただ臆病なだけなんだ。
 僕は獲物の輪の中にも入れない。
 人は僕を育ちが良いねと言うけれど、良い育ち方ってどんなものだろう。
 僕は先に逝った友達と約束したんだ、絶対にあきらめないってね。

 僕は僕を生きなくちゃならないんだ。
 君が君を生きなくちゃならないように。
 僕って意外としつこいんだよね。

 森には天使がいてね、僕に泣くのを許してくれたんだ。
 でも僕は泣かないよ。
 腕利きの狩人が僕を獲物に狙っていたとしてもね。


自由詩 獲物の狩人 Copyright ヒヤシンス 2017-07-22 04:27:19
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