irrational
完備

きみは√5を演じた。
えいえんの数列をとほく見つめて
限りあるいのちを限りなく近付けていく。
冬生まれのかさぶた、と
言ったの?
きみの生まれた日が
《最初のさんけた》
という『言葉』で伝えられたとき
演じる私に演じよと差し出されたてにをはを
ひとつひとつ拾ってくれて、本当にありがとう。
怒りをしらないきみの右目が
『数字』を知っていく日々に
左目だけは数を見つめていた。
いつか私はきみに無理数を教えたけれど
きみは「かなしい」と思い、右目で恋をした。
《さいしょの三桁》
は、幾度反復するのだろうか
などと問うこともせず
《さいしょのさんけた》
を、愛したまま、
きみの左目はえいえんの数列が
銀河の果よりも続く姿を受け入れている。


自由詩 irrational Copyright 完備 2017-07-19 08:22:45
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