鶏ノ夜
服部 剛

平たい皿の上に
幻の鶏が一羽
細い足で、立っている

 こけえ
 くぅおっこ
 こけえ

青い空へ吸いこまれてゆく
あの日の、さけび

先ほどまで
醤油のたれにまみれていた
肉の残骸はすでに
わたしの胃袋の海へ沈み

お座敷に腰を下ろしたまま
羽ばたきを忘れた日々に疲れ
壁に凭れる酔いどれを
見つめるのだ

皿の上に立つ、幻の鶏
哀しみに澄んだ

びい玉の瞳  






自由詩 鶏ノ夜 Copyright 服部 剛 2017-07-05 18:33:06縦
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