マス埋め遊び
藤鈴呼


ライカのカメラと言われても
手にとったこともなければ
大きなカメラと三脚を手にしている人は
全員 カメラマンだと信じてもいないから
どうもよく 解らない

透明な箱の向こう側に
どんな素敵な景色が舞っているのだろう
気色ばんだ肌の色が 桜の花びらと同化する頃
咲き出した躑躅

クルメツツジで検索したけれど
花びらの模様までは 解らない
八重の蕾の合間を 悠々と渡る
小さな虫の楽しさばかりを
ゆっくりと連想しては目を瞑る

陽光が眩しすぎたのだ
フラッシュにご注意くださいの看板も 光で透ける
スケルトンが美しかった映画のタイトルは忘れた

骨張った顎と格式ばった頑固な脳味噌を
ぐちゃぐちゃに溶かすと
甘い汁が出て来た

いつか 花びらの根元から吸ったニオイと 
おんなじだ

不快感ではなく もっと先のほう
優越感などなく もっと奥のほう
翻る旗が 出航の合図

風が吹き荒れなくっても
今は エンジンで 前へ 前へと 進むから
あなたは 安心して
乗っていて ください

アナウンスが流れて
濡れた座布団に
腰を下ろした

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自由詩 マス埋め遊び Copyright 藤鈴呼 2017-06-27 10:49:45
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