蛙の夢
藤鈴呼


鉄臭さの先まで 浸み込んだ憂鬱
鉢の奥まで 逃げ込んだ金魚が
沈み続ける恐怖を 時に描く

鰭で語る四方山話 
弧の角度如何によって 結末の代わる運命
シナリオを書いたのは誰?

誇りっぽい町並みを走るケーブルカー
すっかり観光化してしまった応対
巻き上げるタイヤの隙間に 涙が映る

湖面の白鳥を 思い出さないかい?
彼等の羽根 一つ一つを
摘み上げて 放り投げて 笑ってる

オールを漕ぐのは 意外と力が要るんです
例えば ジャッキアップと同じで

片方が順手だったか 逆手だったか
両方とも同じ角度が良かったものか

説明を受けた時には 覚えていたコツを
すっかり 忘れてしまっている

波間に埋め込んだ 魂 一つ一つみたいに
揺らりと浮かべた葉の 流れる先に
願いを込めた 
遠い過去の ワンシーンのように
不確かな 想いなのです

ふわりと香る桃の花
向こうの山際を 彩っている
もう少しすると 藤が咲きますね
蕾のような 八重の桃色を
ゆっくりと 眺めながら 集う
井戸端会議が
ただただ 懐かしかった

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自由詩 蛙の夢 Copyright 藤鈴呼 2017-06-24 12:10:17
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