息子の見舞い
服部 剛

二年前にこども医療センターで行われた
ダウン症をもつ書家・金澤翔子さんとお母さんが
講演する写真が、廊下に貼られていた
(写真の隅には、ダウン症児の
 息子を肩車する僕と、隣の椅子に座る妻)

その日に書いた「共に生きる」の
優しく力強い文字は、写真の上に展示され
僕はいつもひと時見上げてから
(よし…!)と気を入れて
入院中の息子が待つ病室へと歩く

廊下 を歩きながら、翔子さんの
「共」の字が、脳裏に浮かぶ

 いのちの宿る「共」の字は
 二人三脚のぎこちなく楽しい歩行のようで
 夫婦も親子も友達も
 〈ふたりでひとり〉であることを
 今日も密かに語っています

思いを巡らせながら歩く内…息子の病室に着いた
若い介護の兄さんが、介助していた

「ありがとう、やりますよ」

にこり、と立つ兄さんと入れ代わり
座ったパパは、息子の目をまっすぐに見て
食事の介助を始めた  




  


自由詩 息子の見舞い Copyright 服部 剛 2017-06-02 23:01:14縦
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