色褪せぬ本気をください
藤鈴呼



風邪を引いた時
キコキコと 缶切りの音がして
ぷるんとした 大きな
桃が出て来た

なんて言うお話は
きっと ホームドラマの見過ぎで
実際問題 そんなトキには
味わう余裕も 無いくらい

だけど
幻想ばかりは 確りしているから
妄想するのは 自由なのだと独り言
滑り台を 軽やかに降りて来る

シーソーは 相手がいないと 出来ないのだから
今日は ブランコで 我慢してしまおう
公園内を ざっと見まわして
他に 遊べるものはないかと 画策する
一人遊びも たまにはいいもんだ

そこには
今日も 昨日も 一昨日も一人だった
と言う事実は 含まれておらず
きっと 明日や 明後日や 明々後日は
友人達に 囲まれているのだろうと言う
我儘な 願望ばかりが
この身を支配するのだ

なあ坊や
手にした誰かのコインを
決して放さんと 
指が折れそうな程 握り締める 掌に向かって
放たれた合図
白い髭と犬とフリスビー
これで三人の巴が完成した
あと二人くらいで この身は包まれる

公園の端で
いつも 脇役のように佇む大木を
皆で手繋ぎ 囲むような
幸せな瞬間
そのトキになったら 本気で追いかけよう

手繋ぎ鬼でも 缶蹴りでも
氷鬼でも 何でも来い
公園を 飛び出したら 住宅街があるから
いっそ 高鬼だって
出来ちゃうかも 知れないんだヨ

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自由詩 色褪せぬ本気をください Copyright 藤鈴呼 2017-06-01 21:29:37
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