ばらばら
田中修子

朝は胸元を掻きあわせる、ひとりぼっちでうす水色の空のしたあるいている、しゃべることのできない胸のうちにぶらさがるのはサナギ、だまって羽化する日をまっている。夕暮れがきた、ほれ、いくつめだろうか、折ってかぞえて殖えすぎた指の数。なまぬるい桃色の、つめたい青色の、みあげる目を切りさくよな、雲のま白はかなしい。吸いこまれては吐きだされて、手放そうとして吹き返した。また、またまたきたよ、黒い夜、ちらばっている星、月をあいまいにする雲。ああ、からだの冷える朝がこわい。深く眠れぬうちに、いくつもの夢があって、男も女もやる、蛇も赤子も墓もやる、生きるも死ぬもぜんぶやる。やがてサナギからでてきた蝶は羽を病んでいてまるで飛べなかった、地にポタリと落ちてすぐに人にふまれ、鳥にくわれ、蟻地獄におちた。飛ぼうとして這いずっていたからさいごまで笑っていた赤い唇のかたち、瞼は二つの繭。


自由詩 ばらばら Copyright 田中修子 2017-05-27 21:34:05縦
notebook Home 戻る  過去 未来