降るもの 3断章
新人さん



張りつけられた心は
鉄を含んでもいないのに
錆びるさびるサビル

錆びて凍てついた心は
剥がれる
剥がれる
根こそぎ剥がれてしまう

はがされた裏に何があるのかのぞいてみたら何もない
何もないんだ
なんだ、これが僕の心か

なんて薄っぺらくてちっぽけなんだ



雪が降る日でもないのに
何か降ると思ったら
思い出が降り積もっていた
小さいころの母の思い出
幼いころの初恋の思い出
嬉しかったこと悔しかったこと
降るふるフル
降り積もる
歌を歌うように降り積もる
こんなさびしい駅で
降り積もったところで行き場もないのに

僕は問いかける

「列車はいつ着ますか?」

誰も答えない
駅員すらいない
ため息をついた瞬間ものすごいスピードで
風がこの駅を追い抜いた



思い出が降る
降り積もる
母が降る
雨が降る
真珠みたいな宝石が降る
空虚な価値観が降り積もっていく
意味のないものばかりが降るものだから
こうして黙っていれば溶けていくと思ったら
降り積もる
雪になって降り積もる
寒いさむいサムイのです
あまりにも寒い
寒すぎてもう動けません
僕はうずくまる

あの空の向こうから
こんなに思い出ばかり降るというのに

未来の約束はどうなっているのか


自由詩 降るもの 3断章 Copyright 新人さん 2017-05-27 12:51:54
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