キリ
藤鈴呼


冬を越えた枝たちが腐る手前の物語
固い嘴が 何かを探して突きまくる音が
リズミカルに響く森の奥で
ピアノの鍵盤にも似た色合いの葉先たちが
くすぐったいような角度で触れ合えば
愛が生まれる

ピィと鳴くは 新たな命
薄れゆく源泉を絶やすまいと
影から見守る瞳

一輪の花が そよと風に流されて
ひっそりと 種を落とす
常に見守られて来たから
突き放されてしまうことには
慣れて居ないのですと独り言

どうか 見つめていて 下さいな
見つけてくださいまでは 望みません
ただ 瞳だけは 閉じぬようにと
祈ったじゃあ ないですか
唱えたじゃあ ないですか

啄木鳥の合唱が始まると
湖面が小波の如く 揺れるのです
激しさも 歪んだ愛も
全て 全て 忘れ去ったかのような嘴が
ただ 鋭くて
ただ ただ 痛かった

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自由詩 キリ Copyright 藤鈴呼 2017-05-25 14:06:46
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