五月の犬
むぎのようこ

日射しにぬるむ木蔭に焼かれた
横たわるしろい肌
くるぶしを舐める犬の舌のざらつき
渇いていく唾液とこぼれる光は
すこやかにまざるばかりで手放しかたを忘れながら
あたまをなぜてやる

季節は、みどりは生い茂り
わたしたちは埋もれるばかりに
あせばんで
鳶のように同じそらを旋回するばかりに
はりつめては
はぜるときを待つ種子のように
寝息をたてていた

こどもたちのあそぶ声はとおく
さわさわと葉に葉にささやかな
ことのはをちりちりと
風に吹かせては降りそそいで
おおいかぶさる影の
ふちどりが
静かにもえている




















自由詩 五月の犬 Copyright むぎのようこ 2017-05-13 18:03:49
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