スイッチ
藤鈴呼



軍手もないのに
ベタベタの柱を触る作業は
非常に不愉快で

遠くを眺めると
さも気持ち良さげに飛んでいる姿が
一瞬で目に入ってしまったので
非常にムカツイタ

打ち付けるだけの雫が何度も割れて
輪になって踊った日々をも忘れた日

遠くに見える漁火が全ての合図
夕暮れのスイッチを探し始める時間帯

鳥は高いか
羽根は白いか
浪は花びらと化するのか

一生懸命 考えたのだけれど
終ぞ 答えなぞ 出ぬままに
溜息ばかりを 繰り返す

緩やかなカーブの底に
幾つもの哀しみが詰まっている

耀き始めた刹那
そは緑に
本来は 透明であるべき存在をも
凌駕した

帆が見えるから きっとあれは 船
穂が実るから きっとこれは 米
歩を進めれば きっと行ける 道

みちのりにつけるのりが見当たらなくて
ベタベタの手のままで 探す
軍手は もう 必要なくなった

北風がつぅと吹く内は
大分重宝されたものです
今では 汗を拭くくらいが関の山

その内 見向きもされなく なるんでしょう
そんなこと 分かり切った 事実ですね

五隻の漁火から
そんな話し声が響く代わりに
ポオと嘆く音が 聴こえた気がした
遠すぎて ちょっと 分からないのが残念

もう一度 夕闇のスイッチを押したら
彼等も 海の中に 隠れてしまうから
今の内に お喋りをしよう

たわいもないこと
山登りをした時の おはなし
見上げた太陽の 美しさ
そして

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自由詩 スイッチ Copyright 藤鈴呼 2017-05-13 15:59:07
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