フライング・ムーン
藤鈴呼



夕暮れの町並みには グレイが似合う
赤でも青でもない
喧騒を忘れた美しい光が 交錯する瞬間

それは シグナルだったり 
少し早い 月の女神だったり
今 落ちんとす 太陽光線だったりもする

まやかしのように
響く トランペットの音

今 練習中だから
もう少し 経てば 上手くなるから

上手にハイハイできぬ 赤子のような笑顔を
ゆっくりと称えた少女が
三つ編みを ほどく瞬間

青白い雲が 横に流れた

大切な言葉を 耳から話す瞬間
ツツーッと流れる 雫の如く
振り返ってはイケナイ 瞬間がある

あの 消えそうな音の中に
どれだけの真実が
巣食っていると 言うのか

ふわふわのシュシュも
手触りの良い サテンのリボンも
美しい黒髪には 叶わない

何故 無理に 染めようとするのか
それだけが 分からなかった

遠目に眺めた 建設中の建物
完成すれば 賑やかに なるのだろう

今日の喧騒と 一体何が 違うのか
何も 違わない

互い違いのパズルを 組み立てる作業
薄い 鉄骨の下を
鳥のように 行き来する人達
その先に流れる 三つ編みの文様

一本だけ触れる 頬の先に 感じたのは
少女の髪の毛 それとも
鳥の羽根でしょうか

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自由詩 フライング・ムーン Copyright 藤鈴呼 2017-05-07 23:54:41
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