レモネード
藤鈴呼


人工的な骨盤を ゆっくりと動かすと
腰が ぐるりと 回転した
それに合わせて 揺れる尻

砂糖を入れた 紅茶
酸っぱい系統のものは キライだと伝えてあった
それでも垂らされる 一滴の黄色い涙

るるる
静かなハミングが 聴こえたようだった
吸着するのは ハウスダスト
細かすぎて 目には見えない
見えたとしても 通り過ぎて行く
もしくは 目薬によって 静かに 流されていく

かきむしるだけの余裕がなかった
髪の毛 一本たりとも 無駄にできなかったのだ
ただ ペンを取って 何かを描く
その軌跡上に 涙は必要なかった

見上げた空から降って来る雫
この前までは 雪だった
思い出す手前で 目を瞑る
閉じてしまうのは 勿体ないから
ほんの少し 甘酸っぱさを 
思い起こすかのように

静かな流の中で 輪切りの檸檬が揺れる
こんなに穴が開いていたんだねえ
綻びを縫うような糸が 見つからないけれど
汚い意図が露見するよりは マシなのだと
言い伝えた

この心に あの瞳に染みわたる レモネード
酸っぱいのは キライだと
既に 伝えた はずだった

るるる
溶かされた ハチミツの行方だけを
追い駆けられないでいる

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自由詩 レモネード Copyright 藤鈴呼 2017-04-28 22:40:46
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