水際のマーメイド
藤鈴呼


何時だって 穴の先は 暗いから
抜けた瞬間に 広がるのは
青い空だと 決めていた

白い 浪の花ばかりが 目下の課題
ふわふわ 浮いて居て くれたなら

カモメか ウミネコか
迷うことは あっても
惑うことなど ないのでしょうに

見分けが つかないのです

ふわふわ と 瞬き続ける羽根が
両腕を 伸ばしても
届く距離には 
存在して いないのですから

ここに 物差しが あったとて
地上から 何センチ と 測ってみたところで
きっと 意味は ない

シュッと ユビの腹を 切り裂きそうな
ステンレスのような 切っ先の鋭いタイプ

巻尺と 一つの丸いボタンで 稼働する
アイツでなければ
何事も 図れやしない

長靴を 履いた
何度目かの 正直
棘は 抜けると 信じてた

ここに 毛抜きは なかったけれど
ちょっと つまんだら
魚の骨くらいに 簡単に 抜けたわ

問題はね
三枚卸なの
未だに 出来ないんだわ

チャレンジ精神なくして
技術の上達なんて 有り得ないわね
肝に銘じておくわ

そう 言い含めたまま
パシャッと 唾を吐いて
彼女は 立ち去る

水際のマーメイド

追い駆けようにも
この岩場は 固すぎて

跳び上がったら 怪我をしそうだったから
爪先立ちで 指先を伸ばした

軽く触れた 唇が
一瞬で 離れた

世界は 冷たく 耀いていた

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自由詩 水際のマーメイド Copyright 藤鈴呼 2017-04-20 12:39:26
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