残雪に鴉
ただのみきや

 残雪に
     鴉

   なにかを咥えて木の間に消え た

 黒々と濡れた道の上
枯れ枝のような足を引きずる音がする
淡く暈したからそら

惜しまず捨てた
こどもは一年前のこどもを

繰り返すものたちの中で
帰らない後姿が鏡の奥で小さくなって
 
 残雪に
     鴉

帰らない旅の道すがら幾度となく巡り来る
名も無く区別も無く
   わたしは
       あなたの


      甘い水を
          求めて  闇路を通う
         望み見る 人の性か
       青白く灯した想い
        隠しきれず
          かぼそい糸に 繋いだ
      朝には 焼かれる 
             夢の束ねを
        獣の瞳に浮かべ
            乱れるまま
        散るように  咲いた
          波紋の声音こわね
    やわらかい盃にくちびるをおしあてて
        生と生と死
        三つの点が
            ずれながら
                互いを     
       求めて
          呼び交わし
                繋がらないまま
             翅をふるわせ
           花は      匂い


   一枚の紙が朝を隔てる
書き崩れて 灰

残されたイメージは栞のように立った
    どこまでも続く白紙のページ

 残雪に
     鴉

帰らない旅に繰り返し現れて
   あなたの
       わたしは





               《残雪に鴉:2017年3月29日》








自由詩 残雪に鴉 Copyright ただのみきや 2017-03-29 22:55:53
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