鉄クサイ男 水臭い女
藤鈴呼


口の中に広がる 錆びのような味
毎回 思い出す 鉄棒のシーン

Tシャツの裾を 括りつけて
何度も後ろ手に 回り続ける

逆手にするのが 邪道だった
順手のままで 十手を持つ構え

帯はラム色 新しい名札を もうすぐ貰えるの
ニコリと笑う唇に スッと引く紅と 同じ色

伸びきったシャツが 斜めに垂れ下がり
あの人の 目尻のようだと思ったら 吐き気がした

にやけ顔の似合う 頬の線と同じ角度
笑顔の線を想像する時 何となく仏に見える曲線が
良い人に見えた

あなたは何も言わない
ただ しんみりと 思い出話をするように
語り始める

一つの物語なのだと 読み込む前にスルーして
読後感を認める
スタンプなんて 作成出来ないの
絵心が ないから

いや 違うね 必要なのは スマホケース
ちょっと 布のような 角ばったヤツ
矛盾するボタンで そっと留めたら
全てのアナウンスを 拒否できそうだった

鉄棒を持つ手が 冷たくなり始める
体温を 奪われたのだ
あの時 順手に 持ち替えていたら
この 血液を 送り込むことに
成功したのでしょうか

鉄棒の内側に流れる 脈々とした回路を
今でも 感じるのです
逆さまの空を 思い出す旅に
朝から 出掛けます

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自由詩 鉄クサイ男 水臭い女 Copyright 藤鈴呼 2017-03-28 21:45:52
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