時の化粧
ヒヤシンス


 時が静かに化粧をして私に迫ってくる。
 時の誘惑は川沿いに咲く桜のように美しい。
 誘惑を美しいと捉える心は不純であろうか。
 年を追う毎に時の魅惑に囚われてゆく。

 一瞬で燃え盛る時の間に私は嵌ってゆく。
 彼女の裸体は妖艶で誰かの描いた絵画のようだ。
 その顔は情熱で溢れている。
 喘ぐ声は、地の底からの響きだろう。

 もはや私は彼女の虜となる。
 セピア色のその背中は滑らかで、とても淡い。
 私はその背中に優しく接吻する。

 これは夢だろうか。
 気が付くと彼女は知らん顔して私の脇を通り過ぎ消えてゆく。
 私の鼻腔に薄い化粧の匂いを残したまま。


自由詩 時の化粧 Copyright ヒヤシンス 2017-03-25 05:14:14
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