時の心
ヒヤシンス


 真昼に地を這いまわるいくつもの影を私は踏めずにいた。
 流れゆく時までも私のせいで歪めてしまうかもしれない。
 私の病はすんでのところで踏みとどまっている。
 消えない記憶は墓場まで持っていこう。

 人生における迷い事は巻煙草に包んでしまおうか。
 吸ってしまえばそれは消えて無くなるかもしれない。
 私の病は確実に改善している。
 それでも抱えている悩みまで墓場へ持ってゆく気はない。

 夢と現実が交互に迫ってくる夜。
 深く心に沈潜すれば、都会を歩む驢馬が見える。
 静かな息遣いと饐えた匂いが宙を舞う。

 真昼の影は闇の中にすっかり土着している。 
 それでも街路灯に照らされた誰かの影はやはり踏めない。
 なぜって流れゆく時だけが私の唯一の味方だから。
 
 

 
 
 


自由詩 時の心 Copyright ヒヤシンス 2017-03-25 03:54:11
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