春 虚
塔野夏子

春の白い空には
いつも浮かんでいる気怠い書体の半透明の文字
“Anywhere out of the world”
(ボードレールとシャガールと中原中也の三角形)

それを見あげていると
私の中の抒情と抒事が
かすかに青く軋むのだ
そしてその軋みに黄色いフリージアの香りが
あえかに絡みつくのだ

“Anywhere out of the world”
白い空へと
ツァイガルニク効果が幾重にも
谺するのだ……



ツァイガルニク効果:達成されたことよりされなかったことの方が記憶に残る現象





自由詩 春 虚 Copyright 塔野夏子 2017-03-23 11:06:03
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