人と犬は枝と花
田中修子

冬のあいだは閉じていた即売所に
春の野菜が並ぶのをみにいった

空に白い梅の花が
燃え上がるように咲いている

ハンチング帽をかぶった老人が杖をつきながら
老犬とゆったりと歩いていた

犬は
毛がところどころはげていて
右足には
はみ出た綿みたいなのがみえ
歩きづらそうにしながら
よって来てくれた

かがんでなでた
白にうつりかわった目が
とてもまっすぐにわたしをみた
枯れ枝のような尻尾が
したしげに揺れていたな

充ちている
一人と一匹だな

ありがとうございます
こちらこそありがとうございます

挨拶をして別れる

さっき枝にとまっていた花が
まばたきすると
しずかに散って
地に淡く滲んでた


自由詩 人と犬は枝と花 Copyright 田中修子 2017-03-23 01:40:38
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