まなびや
田中修子

いつのまにか名前を忘れていて
出席番号だけになった

常緑樹はかわらなくて
花のにおいはかけている
校舎と門
息をするのがむずかしいような
薄い空だけ

水に飽和して粘液のような砂糖みずのなか
結晶の残る
とけきれない塩みず

呼ばれずに呼ばれたのは
みながなあなあにする
美術の時間

この中に名前を書かないで
課題を提出した人がいます
出席番号はただの記号です
名前にあなたの命がこもっています

そっか、私まだ
ここにいるんだったっけか

みんなが繭になりドロドロと溶け切っている
安いファンデーションにかえって赤い斑点が浮く

とがった体で
名前を呼んでくれる人を
ただ ただ
探していた

わたしのまなびや


自由詩 まなびや Copyright 田中修子 2017-03-16 01:11:13
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