がらすゆき
ただのみきや

フロントガラスの雪
百や千もの指が
百や千もの詩を書こうとして
なにも書けず
スルスル流れ
見通しの良い隔たりは
光景だけを素通りさせる
百や千もの天の指紋が
色も形も失って
理由を忘れた涙のように


指という指が
いっせいに赤く染まる日
ぬるくてかたい心の包皮を
べっとり 重くしめらせて
耳目も口も
窓という窓
扉という扉が
血糊で塗り込められた
木偶の棒は
抱えた祈りに腹を裂かれ
黄金はない
廃物の 幸福の 殻 その透き通った 軽さの
どこに
おまえはどこに


空虚が
いっぱいに満ちていた
ジリジリと時に炙られても
目減りせず
噴きこぼれもしない
空虚が
目は見るが
なにも追わない
中でなにかが泳ぐだけ
唖々……唖々……どこへ
ことばにならずこえにされず文字のからだも得ないまま
逝く雪ながれすがる硝子に去り往く姿はさらさら泣いて
百や千もの詩想
ほどけてみえず
みずのまにまに





               《がらすゆき:2017年2月18日》










自由詩 がらすゆき Copyright ただのみきや 2017-02-22 20:54:38縦
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