素手
藤鈴呼



何処まで 走りたいですか と 問いかけて
どこまでも と 応える

最初は 同じなのだけれども
頷く頬の角度から
冷たい影が 伸びているようで

ずっと 見つめていたら
風邪を引いた

ウイルスなんて 目に見えないんだから 大丈夫だって
水で薄めた洗剤を ぽつぽつと 押す

容器の中で 
それらは 固まり尽くしている

割り箸で 突くと
今迄 仲良かった 粒ぞろいの洗剤たちが
イヤイヤと 首を振りながら
ゆっくりと 離れて行くのです

いや 違うでしょう
もっと こう
固形なんだから 例えば そう
スライムみたいな・・・

言いかけて 止まる
吸盤に 吸いつく瞬間のように
彼等が 集まり始めたからだ

ダッシュボードの上で 影が動く
右下がりなんだから
左側に 移動する訳はないのに

窓に残る 雨粒とは
反対方向に 動く

そういうことならば
話は 早いのですが

何度も通り過ぎた シグナルの色が
とうに 分からなくなるくらいの 暗闇

普通ならば その方が
クッキリ ハッキリ する筈なのに
いつもの あなたの 相槌みたいに
ゆるやかな ペースで
苛立ちを 加速させる

スライムみたいな
色の
ちょっと 腐りかけている
かつては
シャキッとしていた葉を
かき集めるのに

素手で 充分だ
ゴム手袋なんて
今は 必要ないよ

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自由詩 素手 Copyright 藤鈴呼 2017-02-22 11:42:01
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