夜の背後
シホ.N



明けないはずの
夜が明けて
僕はまたしても
僕の一人を
夜の向こうへ
置き去りにしてきた

明けなかった夜は
もはや異次元
永久に交じわらない
平行線の世界

明けない夜が
思いがけずに明けたとき
僕の一人の
止まった表情を
僕は遠くとらえる

取り残された
たくさんの僕の一人が
それぞれ
不条理の
袋小路にしゃがみこむ

夜の濃さの極みに至り
そうして僕は
幾度も僕の世界に
戻ってきた

それは
更新された世界
同一性は疑わしい

僕は
僕の一人を分割し続け
失い続ける
一度として会うことのない
僕の一人一人が
夜の背後に立ちつくす



自由詩 夜の背後 Copyright シホ.N 2017-02-14 17:15:00縦
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