パンドラ
田中修子

いつだって
箱の底に
残っている
ひとつ

とろける、喉に絡みつく、朝焼けの甘やかな、桃色
足掻くように過ごす、ふつうのひとができることをわたしはできない、晴れる昼、淡い水色
-雨の日は息をするのがなぜか楽だ、雨音のおくるみ-
あんまりに、動けなくなるほどに鮮やかな夕暮れ、紺青色
夢への準備を整える、夜の黒には、ザっとまかれた極彩色の星星、煌煌の月

いくつもを越え

体中、火をまぶしたみたく血まみれになった
歩いて駆けだして、倒れ
爪が剥がれても這いづって
しがみついた、生きること

いきする、いきしていることを、やめなかった

わたしは箱よ
好きなだけひらきなさい
たくさんの災厄を見られるよ
ただ、情けの、憐れの、好奇の目は、打たれるでしょう
みたこともない、美しいあかりに、かならず

あなたのそこにもいます、わたし
かならずさいごにのこる、わたし


自由詩 パンドラ Copyright 田中修子 2017-02-03 17:49:24縦
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