お気に入りの一編
ただのみきや

説明 解説 言い訳
どれも要らないと云った
ただそのままで
あなたは惹きつける


男が女を始めて見たように
女が蛇を始めて見たように
たぶん
美しくて奇妙
エロチックで恐ろしい
縫い付けられた
意識の導火線


なにも知らないこと
正しい出会いとは


食するまでの三秒は永遠の顔
ゆらぎながら凍結する
知りたくて食べたなら
知らないままで食べたということ


そうしてすぐに異端審問
サディスティックでマゾヒスティック
拷問は繰り返される 
学び続けた人生だから


あなたを複写して魂はのたうち回った
いくつ針を刺しても固定しきれない
鱗が花びらみたいに散って
散りながら燃えて 
燃え尽きて
焦がしはしなかった
誰の土地も
内側に流す涙のように


だけど知ってしまえば哀しい玩具
手垢で汚れて往くだけの
古ぼけたお人形
それを傍らに抱いていつまでも
何度でもごっこ遊びに夢中になれるなら


――Imagination! 
ようこそ我が家へ


だが純粋さもいつしか所作を身に着ける
節回しも朗々と――





           《お気に入りの一編:2017年1月25日》










自由詩 お気に入りの一編 Copyright ただのみきや 2017-01-25 20:35:58
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