可否道その4
st

清らかな水を求めて  
山のふもとへと向かう

ブラジルサントスを  
ブルーマウンテンに変えてしまう
魔法の水は

雨が大地にしみこみ
土の中を何年もかけてゆっくりと
通りぬけてくるもの

このあたりに多い酒蔵も
この水を使っている

春と秋だけに
手間暇かけても時々は
ゆく価値がある

野点(のだて)の準備は 大変だが
その味と香りは 
忘れる事ができない

水を沸かすキャンプ用ケトルと
アルコールランプや 
ケトルをのせる台

今はもう 幻の抽出器具となった
アートコーヒーが作った
コーヒーシェーカーを用意する

知る人ぞ知る 
最高の抽出器具といわれたもので

現在も最上の味と香りを抽出できるとして
コーヒーにうるさい人びとが使っている

野点には 
サイホンは無理で ドリップも
細口のドリップケトルを運びにくい

名前のとおり
カクテルシェーカーと同じ構造で
上部のストレーナーを開けて

ボディーに挽いておいた
少し粗挽きの粉をいれ
沸騰させたお湯を注ぎ込む

そしてストレーナーの形にあわせてある
専用のろ紙をセットして
ストレーナーをボディーにもどし

手に持って軽く数回振って
1分ほど待ち
コーヒーカップにそそぐ

新鮮な空気につつまれながら
豊かな香りが広がってきて

山麓の村や美しい景色のなかに
とけこんでゆく

この清水が近くにあればよいのにと
かなわない夢を想いながら

ブルーマウンテンのようになった
ブラジルサントスを味わう



自由詩 可否道その4 Copyright st 2017-01-12 12:30:52
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