ひとつ 無言
木立 悟





ほどけて蜘蛛になる陽の前を
光の葉と穂がすぎてゆく
海に沈む
巨大な一文字


古い風はさらさらと崩れ
胸像の庭を埋めてゆく
誰かが居るようで居ない揺れ
家と家のはざまの影


冬の通りの案内人は
ついていけぬほど速く自転車を走らせ
やがて静物の森に消えてゆく
止まったままの街を残して


鉄の獣の港にも
雪はゆるりと降り積もり
白と黒の飛行船
曇の底を昇りゆく


映さぬことで映す鏡が
窓のかたちに押し黙り
無から無へとひとつずつ
水面の帆はひらかれる


雪の原につづく足跡
転がる陽の輪に向かい近づき
ふいに途切れ 暮れに浸され
凍えた蒼にまたたいている


空の光の空白が
川を蔽い 流れゆく
鉄の獣は歩みを止め
曇の底を見つめつづける






















自由詩 ひとつ 無言 Copyright 木立 悟 2017-01-11 22:39:06縦
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